第4回 技人国制度はなぜ厳しくなったのか ― 採用できない時代ではなく、「採用戦略」が変わる時代へ ―

第4回

技人国制度はなぜ厳しくなったのか

― 採用できない時代ではなく、「採用戦略」が変わる時代へ ―


この記事でわかること

  • 技人国制度の審査が厳しくなった背景
  • なぜ「仕事内容」がこれまで以上に重要になったのか
  • 技人国と特定技能をどう使い分けるべきか
  • 中小企業がこれから考えるべき外国人採用戦略

外国人採用制度は、ここ数年で大きく変化しています。

技能実習制度は育成就労制度へ移行となり、特定技能制度は人手不足対策の中心制度として拡大が続いています。

その一方で、企業から最も多く相談を受けるようになったのが、「技術・人文知識・国際業務(技人国)」です。

「以前より審査が厳しくなった。」
「同じような仕事内容なのに許可が出ない。」
「ホテルや製造業ではもう技人国は難しいのではないか。」

こうした声を耳にする機会が増えました。

確かに、技人国の審査は以前より慎重になっています。

しかし、それは「外国人を採用できなくなった」という意味ではありません。

むしろ企業には、

法令に照らしてどの在留資格が自社の採用に最も適しているのかを考えること

が求められる時代になったと言えるでしょう。

今回は、技人国制度の厳格化を単なる制度変更としてではなく、中小企業の採用戦略という視点から整理していきます。


1.技人国制度は「厳しくなった」のか

最近、外国人採用を検討している企業から、

「技人国は以前より難しくなりましたか。」

という質問を受けることが増えました。

結論から言えば、

審査は確かに厳しくなっています。

ただし、これは制度そのものが変わったというよりも、

本来の制度趣旨に沿った審査がより徹底されるようになった

と考えた方が分かりやすいでしょう。

技術・人文知識・国際業務は、その名前のとおり、

専門的な知識や技術を活用して働くホワイトカラー、高度人材のための在留資格です。

そのため、

「大学を卒業しているから取得できる資格」

ではありません。

企業が、その外国人にどのような専門業務を担当してもらうのか。

大学や専門学校で学んだ内容と業務に関連性があるのか。

実際にはどのような仕事を行うのか。

こうした点が以前より詳細に確認されるようになっています。

つまり、

肩書ではなく、

仕事内容そのもの

が重視される時代になったのです。

ホテル業界や製造業でも、

「企画」

「管理」

「通訳」

という肩書だけではなく、

実際の業務内容が技人国に該当するかどうかが重要になります。

これは決してホテル業や製造業で技人国が取得できなくなったという意味ではありません。

会社が求める役割を、客観的に示すことができるかどうかが、これまで以上に重要になったということです。


2.「採用できない」のではなく、「採用方法」が変わった

私は、この変化を悲観的には考えていません。

むしろ、

企業の採用戦略を見直す良い機会

だと考えています。

これまでの外国人採用では、

「留学生だから技人国」「技人国は管理費不要」

という流れで採用を進める企業も少なくありませんでした。

しかし現在は、法令を遵守した上で

本当に技人国が適切なのか、

あるいは特定技能の方が本人にも会社にも合っているのか、

という視点で考える必要があります。

つまり、

在留資格を適切に選ぶ時代

になったのです。

この発想は、今後ますます重要になります。

なぜなら、技人国だけではなく、特定技能制度も大きく拡大し、国内留学生にとって新たな進路の選択肢となっているからです。

企業側が「技人国しか考えていない」一方で、留学生は複数の在留資格を視野に入れて就職活動を進めています。

採用市場は、すでに変わり始めています。

企業も、その変化に合わせて採用戦略を柔軟に考えることが求められるでしょう。

3.国内留学生は「採用のチャンス」になる

技人国の審査が厳しくなったことで、

「もう留学生の採用は難しい。」

そのように考える企業もあります。

しかし、私は逆に、

国内留学生の採用チャンスは広がっている

と感じています。

その理由は、特定技能制度が広く利用されるようになったことです。

これまでは、日本の専門学校や大学を卒業した留学生を採用する場合、多くの企業が技術・人文知識・国際業務(技人国)での採用を前提に考えていました。

しかし現在では、仕事内容によっては特定技能という選択肢も現実的になっています。

つまり、

「技人国しかない」

という時代ではなくなったのです。

企業が仕事内容に合った在留資格を選択できるようになったことは、採用の幅が広がったとも言えるでしょう。


優秀な留学生ほど「複数の選択肢」を準備している

私が日本語学校で進路支援をしている中でも、学生たちの意識は大きく変わってきています。

以前は、

「大学を卒業したら技人国」

という考え方が一般的でした。

しかし現在は違います。

優秀な留学生ほど、

複数の在留資格を理解した上で就職活動を進めています。

実際に私が支援した学生の中にも、そのような例がありました。

ホテルへの就職を希望していた一人の留学生は、

技人国の審査が以前より厳格になっていることを理解し、

万が一に備えて、

宿泊分野の特定技能評価試験にも合格していました。

結果として、その学生はホテルから技人国で内定を獲得し、希望どおり技人国で就職することができました。

しかし、この事例で重要なのは、

技人国で就職できたことではありません。

学生自身が、

「もし技人国が難しくても、特定技能という選択肢がある。」

と考え、自ら準備を進めていたことです。

留学生自身が制度を学び、自分の将来を見据えて行動する時代になっているのです。


企業も採用戦略を変える時代

企業側はどうでしょうか。

まだまだ

「留学生なら技人国」

という考え方が残っている企業も少なくありません。

しかし、

留学生本人は、

技人国だけではなく、

特定技能という選択肢も理解しながら就職活動をしています。

つまり、

企業よりも学生の方が制度を理解している場面さえ見受けられます。

これからの外国人採用では、

「この人材を技人国で採用できるか。」

だけではなく、

「どの在留資格で採用することが会社と本人にとって最も良いのか。」

という視点が必要になります。

技人国と特定技能は、

優劣を競う制度ではありません。

仕事内容や本人のキャリアプランに合わせて使い分ける制度なのです。


4.行政書士の役割も変わる

こうした制度の変化によって、

行政書士に求められる役割も大きく変わってきました。

以前は、

必要書類を準備し、

申請書を作成することが主な業務でした。

もちろん、それは今でも重要です。

しかし現在は、

それだけでは十分とは言えません。

企業がどのような人材を採用したいのか。

その人にはどのような仕事を担当してもらうのか。

将来どのようなキャリアを考えているのか。

そうした採用計画全体を整理した上で、

最適な在留資格を選択することが重要になっています。

言い換えれば、

申請は採用活動のスタートではなく、

採用計画のゴール

になりつつあるのです。

求人票の作成段階から、

業務内容を整理し、

会社の採用方針を明確にする。

その積み重ねが、

スムーズな申請につながります。

これからの行政書士は、

申請代行者ではなく、

企業の外国人採用を一緒に考えるパートナーであることが求められていると感じています。


5.まとめ

技人国制度は確かに厳しくなりました。

しかし、それは外国人採用が難しくなったという意味ではありません。

むしろ、

企業には、

「どの制度を使って採用するか」

という新しい経営判断が求められるようになったのです。

技人国と特定技能。

どちらが優れているということではありません。

会社の仕事内容、

本人の能力、

そして将来のキャリアを考えながら、

最も適した制度を選択することが重要です。

国内留学生の中には、

日本語能力が高く、日本での生活にも慣れた優秀な人材が数多くいます。

こうした人材を、会社の仕事内容に合わせて適切な在留資格で採用することができれば、

中小企業にとって大きな戦力になるでしょう。

これからの外国人採用は、

「技人国で採用できるか」

ではありません。

「会社に最適な制度で優秀な人材を採用できるか」

という視点が、これまで以上に重要になっていくのではないでしょうか。

次回予告

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特定技能制度では登録支援機関の存在が欠かせません。

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留学生専門行政書士 BATTA

留学生専門行政書士 BATTA

【優秀な外国人材と日本をつなぐ就活プロデューサー】
現役の留学生ビジネススクール講師として最新事情を加えた総合プロデュースをあなたに。日本テレビ勤務時代の海外取材経験から世界と日本を人材で繋ごうと行政書士に。VISA申請に留まらない総合人材プロデュースを採用・育成・定着をお約束します。

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