第3回 特定技能制度は人手不足の本命になるのか ― 地方企業は「採用競争」から「定着競争」へ ―

1.特定技能制度は「人手不足解消」のために作られた

特定技能制度は2019年にスタートしました。

この制度の特徴は非常に明確です。

それは、

「深刻な人手不足分野への対応」

を制度目的としている点です。

技能実習制度が「国際貢献」を建前としていたのに対し、特定技能は最初から「労働力確保」を前提として設計されています。

現在、特定技能制度では16分野で受入れが進められています。

現在の主な対象分野

・外食
・介護
・建設
・宿泊
・農業
・漁業
・造船・船舶
・飲食料品製造
・工業製品製造
・ビルクリーニング
・自動車整備
・航空

さらに2024年以降、

・鉄道
・自動車運送
・林業
・木材産業

が追加されました。

また2026年1月の閣議決定では、

・物流倉庫
・リネン
・廃棄物処理

の3分野追加も予定されています。

一方で、この制度にはもう一つ重要な特徴があります。

それは、

各分野別に受入れ人数枠が設定されていて、かつ管轄省庁も異なる

という点です。

外食分野で起きた「受入れ停止」

その象徴的な出来事が、2026年4月の外食分野です。

外食分野は実質的に農林水産省の管理下にあります。

受入れが急拡大した結果、想定人数に近づき、事実上新規受入れがストップする状況となりました。

これは特定技能制度が、

単なる在留資格制度ではなく、

「国家レベルの人材需給調整制度」

であることを示しています。

つまり今後は、

「制度があるから採用できる」

のではなく、

限られた人材を企業同士で取り合う時代

になる可能性が高いということです。


2.技能実習を終えた外国人材にとっての「次のステージ」

特定技能制度を理解する上で重要なのは、技能実習との関係です。

現在、多くの特定技能人材は、技能実習を修了した外国人材によって構成されています。

つまり特定技能は、

「技能実習の次のステージ」

として機能しているのです。

技能実習との決定的な違い

技能実習時代は、

・転職制限
・行動制限
・職場固定

といった特徴がありました。

しかし特定技能になると状況は変わります。

一定条件のもとで転職が可能になり、自分で職場を選べるようになります。

つまり外国人材にとって特定技能とは、

「より自由に働ける資格」

なのです。

ここが地方企業にとって極めて重要なポイントになります。


3.地方企業が直面する「都市流出」という課題

特定技能制度では転職が可能です。

これは制度上当然の流れです。

しかし地方・郊外企業にとっては、新しい課題を生みます。

それが、

せっかく指導育成して戦力となった外国人材の都市流出

です。

なぜ都市部へ移動するのか

彼らの理由は非常にシンプルです。

・給与が高い
・交通が便利
・生活情報が多い
・日本語を使う機会が多い

つまり外国人材にとって都市部は、

「生活しやすい」

ように見える夢の街なのです。

ただし、実際には

・生活費の高さ
・長時間通勤
・支出増加

など、生活して初めて分かる課題もあります。

地方企業としては、こうした現実も含めて丁寧に伝えていく必要があります。

SNS時代の外国人採用

特に技能実習を修了した若い人材は、日本での生活経験があります。

情報収集能力も高くなっています。

SNSや同国ネットワークを通じて、

「どの会社が働きやすいか」

という情報も共有されています。

つまり今後の特定技能制度では、

企業側が選ぶ時代から、

外国人材側が企業を選ぶ時代へ

変わっていく可能性があります。


4.地方企業は「採用競争」から「定着競争」へ

ここが今回の記事の最も重要なポイントです。

技能実習時代、企業側は比較的「人を固定」できました。

しかし特定技能時代は違います。

人材は移動します。

つまり重要なのは、

「採用できるか」

ではなく、

「定着してもらえるか」

になります。


5.これから地方企業に求められる視点

では地方企業はどうすればよいのでしょうか。

重要なのは、

給与競争だけで勝負しないことです。

もちろん待遇は重要です。

しかし、それだけでは都市部との競争に勝つことは難しくなります。

地方企業の強みとは

むしろ地方企業には、地方企業ならではの強みがあります。

① 社長との距離が近い
② 生活支援ができる
③ 地域コミュニティとの接続
④ 「育てる文化」がある

外国人材は、

「自分を見てくれている会社」

を非常によく見ています。

つまり今後の特定技能制度では、

管理ではなく

「定着支援」

が企業競争力になる可能性があります。


6.今後さらに制度は変わる可能性がある

さらに今後は、

技術・人文知識・国際業務(技人国)の審査厳格化によって、

現場で働く専門人材の受け皿不足が課題になる可能性があります。

その結果、

現在の特定技能制度とは別に、

より専門性を持った新しい在留資格制度が検討される可能性もあります。

つまり外国人採用制度は、

今後さらに変化していく可能性があります。


7.まとめ

特定技能制度は、今後の日本における人手不足対策の中心制度になる可能性があります。

しかし同時に、それは企業同士の

「定着競争」

の始まりでもあります。

特に地方企業では、

単なる人員補充ではなく、

「この地域で働き続けたい」

と思ってもらえる環境づくりが重要になります。

特定技能制度は、

「外国人を雇う制度」

ではなく、

企業が

「選ばれる側になる制度」

へ変わりつつあるのかもしれません。


次回予告

第4回
技人国制度の注意点
― ホワイトカラー資格と現場業務の境界線 ―

技人国制度の厳格化によって、現場採用はどう変わるのか。

今後の外国人採用制度の方向性を整理します。

留学生専門行政書士 BATTA

留学生専門行政書士 BATTA

【優秀な外国人材と日本をつなぐ就活プロデューサー】
現役の留学生ビジネススクール講師として最新事情を加えた総合プロデュースをあなたに。日本テレビ勤務時代の海外取材経験から世界と日本を人材で繋ごうと行政書士に。VISA申請に留まらない総合人材プロデュースを採用・育成・定着をお約束します。

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